poisoned doll 【act.01】
こんばんは!久しぶりに点心様とのリレー小説!ワクワクしています〜
今回は軍部設定の年齢差大幅UP物語(笑)

ちょっと長編になりそうな予感?
お楽しみ下さいませ〜

(honey box/白和香)
poisoned doll


【act.01】


自分にとってのパートナーとは、自分が必要とする時に直ぐに用意出来る人材の事を言う。

財界人の主催するパーティなら、華やかで色気のある女性。
知識人の集まりなら、控え目で知的な美人。
将軍の主催するパーティなら、その家に居る女性を盛り立てる。

そして、夜に必要な女性はそれなりの上等な女を。

最低限の礼儀と、華やかな場所に同伴すればパートナーは喜び満たされる。
そして、自分の野望の為にも彼女らの存在は必要だ。

伴侶としての地位を欲する女も居たが、それらは示唆した時点で即切り捨てた。

そんな煩わしい存在など居らない。
自分の両親を見てそう思った。
結局、人は一人で生まれてそして死んで行くのだから……

家族など、身内などと言っているのは形式だけで良い。


◆◇◆◇◆◇


「閣下が直々に私に頼みがあると?」

ある春の日の午後、午前中の会議を終えたロイ・マスタング大佐宛に一枚の伝言メモが渡された。
漆黒の男は、少し考えるように顎に手を当ててそのメモを再読したが
思い当たる事など無く、諦めたように副官に午後の予定を尋ねる。

「本日は午前中の会議の為に、午後からは書類のサインがあったのですが…実は閣下から今日の分は
全て別の人間に廻すからと、秘書の方が全て引き取られて行かれました」

「…………万全だな。何があるか知らんが、まずは虎の穴に入ってみるか!」
漆黒の男は伝言メモを丁寧に折り畳んで、自分のポケットに仕舞った。

「お気を付けて下さい。閣下の元へはお一人で参上するようにとの指示です。秘書の方のお迎えがありますので」
頭を垂れてやや心配そうな視線を向けた副官に、ロイは口元だけで笑った。

「何、命は取られないだろう。さて、どんな難問を押し付けられるか楽しみだな」
「大佐は色々と目立っておられますので、くれぐれも御用心を……」

──────本当に……

この時点で、自分はあの片目の男を色々な意味で甘く見ていたのだ。
どんな場所に左遷されようとも、どんな無理難題の事件を押し付けられようとも
自分はそれを乗り越える自信も力もあるのだと──────

そして、自分の政権になった時にはこの事さえ笑い話になるのだと
そう思っていたのだ。

──────が……


「やあ!よく来たマスタング大佐。いつも君の活躍は将軍達から聞いているよ?」

ニコニコと、わざわざ椅子から立ち上がって自分を迎え入れた指導者に
ロイは丁寧に忠誠の挨拶をする。

「ああ、堅苦しい挨拶はいいよ。さあ、こちらにまずはお茶をしようではないか」
秘書の先導で、執務室と続きになった豪華な作りの談話室に案内される。
確か、ここは将軍以上。
しかも、腹心と呼ばれる者しか入る事が許されない部屋だと聞いていたが……

ロイは少し状況が読めなくなったと、眉間に皺を寄せたが
それでも黙って指導者の後に続く。

そして、瀟洒な丸テーブルと、猫足の椅子に座っていた「それ」の存在に息を飲んだのだった。


──────人形?

緋色のビロードの貼られた椅子に、白いワンピースを着てちょこんと座っている幼い少女は
黄金の髪と瞳を持っていた。

──────閣下はこんな趣味があったのか?それとも奥方の趣味?

黄金の髪はきっちりと後で三つ編みにされて、大きな瞳に影を落とす睫毛も金色だった。
何よりその表情は人間の子どものようによく出来ていて、そして今まで見た事もないほど綺麗な顔立ちをしていた。

ロイはその人形の存在を尋ねて良いかどうか躊躇って、とりあえず勧められた席に
その人形と向かい合わせの椅子に座った。

暫しの沈黙の中、秘書の女性がワゴンで上等なティーセットを運び込む。
そして、マイセン磁器のティーカップはその人形の前にも置かれたのだった。

「え?」
ロイは驚いて思わず声を出す。
「何か?マスタング大佐」
片目の指導者はニコニコと笑って、妻の焼いたという焼き菓子を勧めた。

「いえ……あの、人──────」形は?と尋ねようとした時
今まで瞬きさえしなかった人形の手が動いて、大総統がロイに勧めた菓子籠に手を伸ばしたのだった。

「これ、エディ。これはお客様が先だよ」
片目の男は甘やかすような口調で、人形のような少女に諭す。
だが、少女はお菓子を口にぽいと放り込んでもぐもぐと口を動かしながら
「だって、こんな着慣れない服着て大人しくしていたら息をするのも忘れていたくらいだぜ!
あー美味しい!おばさん、相変わらず料理上手いなぁ〜」
外見からは想像も出来ない言葉使いと行儀の悪い食べっぷりで歯を見せてニカッと笑う、
先ほどまで人形のような少女がロイの方へ視線を向けた。

「で?このおっさんが候補者なのか?」
「──────おっ!」
ロイは自分はまだ29だと言おうとしたが、相手はどう見ても8歳位の少女なので
反論するだけ無駄だと大きく溜息をついた。

「そうなんだがね。ああ、マスタング大佐紹介が遅れたがこの子はエドワード・エルリック。
今年で10歳になる」
「10歳!…………ですか」
驚きの表情で叫べば、少女にキツク睨み付けられてロイは誤魔化すように紅茶のカップに口を付けた。

「そうなんだよ。今まで施設に居たから少しその……成長が遅れているのかもしれないがね。
私も施設の責任者からの報告を聞いて、先月初めて会ったのだが彼女は天才だよ!」

「天才…………ですか」
ロイは優秀な人材を大総統が見出して、養育したり援助したりしている事を知っていたので
この少女も見掛けだけではないのだろうと、一応納得する。

「閣下は男の子を引き取られたので、次は女の子に?」
「いや、実は私もそう思っていたんだがね。実は彼女の能力は錬金術なんだよ」
「!」

それまで何処か会話におざなりだったロイが、鋭い視線を少女に向ける。
この大総統に「天才」と評価される錬金術師?
こんな幼い少女が?

ロイは途端に姿勢を正して、この席がただのお披露目の茶会ではないと察した。

「つまり、この少女の後見人に私を推薦すると?」
「おお!察しが良いね。流石だよ!やはり天才は話が早い。君に彼女の父親になって欲しいんだ」






──────はい?



「閣下…………」
「何だね?」
「私はまだ独身ですが」
「ウム!知っておる。私もさり気に君に何人もの令嬢を紹介したが、君はさっぱりだったね」
「…………恐れながら、私には過ぎた方々ばかりでしたので」
ロイは自分の心臓に向って落ち着けと命令する。

こんな事なら見合いでも勧められたほうがマシだ!
伴侶を宛がわれるのをさり気に避けてきたのだが、まさか子どもを斡旋されるとは思わなかった。

「閣下。これから思春期を迎える年頃の少女を、私のような一人身の男に!」
ロイは何としてでも阻止せねばと必死で訴えるが、それは少女の一言で片付いた。

「焦んなよおっさん!俺だって選ぶ権利はあるんだからな!まずはキングのおっさんは
あんたと一緒に生活して、上手く行きそうなら養子縁組すれば良いだろうって提案してるんだよ」

「──────!」
ロイは少女のその台詞に、魚のように口をパクパクとさせる。

「そう言うわけだよ。マスタング大佐。まずはお試し期間だ。君には是非この少女の親になって貰って
未来の国家錬金術師を育てて欲しいんだ!期待しているよ」
わははと声を出して笑い飛ばした片目の男に、ロイは恨みがましい視線を向けて……

まだ、伴侶も迎えていないのに子持ちになってしまうかもしれない自分を哀れんで
その部屋を飾る豪華な天井絵を仰ぎ見たのだった。
【2007/02/25 22:28】 | poisoned doll | コメントはコチラからどうぞ♪(0)
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