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「アンタの仕事っぷりは、よぉく分かった。」
散々な一日も終わり、司令部からの帰り道、エドワードは言った。
その表情はなんとも、不機嫌そのもので、明らかにロイを失望…といった感じだ。
まぁ…あの状況では、そういう態度をとられても仕方がないのだが。
しかし、あれが私の実力だと思ってもらっては困る!
別にこの子の親になりたいとか、そんな気持ちは毛頭無いさ。
出来るなら断りたいし、本来、子供なんて人種はなるべく関わりたくない。
ただ…彼女を手放すことによって、軍の自分に対する評価が下がるのは、大いに困るのだ。
なにせ、自分は将来、大総統になる人間。
こんな所で躓いては、先が思いやられる。
だから、なんとか挽回しなければ!!
なら次なる手は…
「なぁ、エドワード。食事にでも行かないか?」
そう、此処は豪華なレストランで大いに紳士を気取って、驚かせてやるってのはどうだ?
そして最後には、『わぁ、ロイ兄さんてば、素敵!』くらい、その小憎たらしい口から言わせてやるのだ。
それに相手は子供だ…『ごはん=餌』という甘い言葉は絶対に聞き逃すまい。
すると、案の定、エドワードは先程とは打って変わり、上機嫌に振り返った。
「いいぞ。何処に連れてってくれるんだ?」
「何処でもいいぞ。なんなら、私の行きつけの店にでも連れて行こうか?」
ここで、ウンと言ってくれれば、しめたもの。
子供でも入れるが、高級感溢れる店に連れて行ってしまえばいいのだ。
そして、私の本領発揮…と。
…しかし。
「じゃあ、俺さ。デ○ーズに行きたいな!」
「…は?」
今、なんて言った?
「俺さぁ、あそこの名前忘れたけど、チョコレートパフェが食いたい。」
「ちょっと待て!デ○ーズって言ったら、ファミレスだろ!」
「そうだぜ?それが何か?ファミレスは子供のサンクチュアリだろぉが。」
そうきたか。
「なぁ、エドワード。せっかくなんだから、そんな所に行かないで、もっと大人っぽい所に行ってみないか?私の知ってる店にも、君が好きそうなパフェはあるぞ。な?」
「えー、嫌だよ。だって、そこのは甘ったるいだけだろ?だけど、デ○ーズのは違うぜ。こう甘い生クリームとフルーツ、そしてクランチを、さっぱり奥深いビターチョコレートソースが取りまとめ、仕上げにこれまたマイルドでとろける様な食感の甘さ控えめチョコプリンが乗っかってるんだ。あれはまさに、芸術の域に達している。」
…お前は、どこぞの美食家か。
「とにかく、俺はデ○ーズにしか、行かないぜ?」
エドワードは長いスカートも気にせず、その場にガバリと座り込んだ。
是が非でも、デ○ーズに連れて行かせるつもりだ。
はぁ…仕方ないか。
ロイの口からは、落胆の溜息が洩れた。
「…分かった。デ○ーズで折れよう。」
「やり!」
「その代わり、大人しくしてろよ?」
「当たり前だろ!俺はもう十歳なんだぜ?うるさくなんてするもんか。」
そうプイッと膨れる仕草なんて、十分子供だと思うんだが…。
かくして、私達はファミリーレストランの王道、デ○ーズに夕食を食べに行くことになった。
…へぇ、ファミレスってこんなメニューがあるんだな。
一度家へと帰り、すっかりラフな格好に着替えたロイは、店の席に着き、メニュー表を見て、しみじみ思った。
考えてみれば、ファミレスなんていうものに来たのは初めてだ。
「なぁ、いろんなモノがあるだろ? 此処なら、食べたいものが決められなくても、なんとかなっちゃうんだよね。」
そういうエドワードはエビフライドリアをセレクトした。
なんと、ドリアの上にエビフライが乗っているという、なんとも豪快な幼心を忘れない一品だ。
「パフェはいいのか?食べたいと言ってたろう?」
「デザートは別腹。コレ、常識。」
確かに、乙女の甘い物は別腹…とは言うが。
「なぁ、アンタも早く決めなよ。俺、あんまり長居は好きじゃないんだ。」
「す、すまない。じゃあ、Aセットで。」
それから、二人の前に注文の品が運ばれたのは、30分もかからない時間だった。
さすがファミレス。
その味に関しては、あえてコメントを控えさせていただくが、エドワードは上機嫌らしく、スプーンを一口は込んでは、頬を緩ませた。
店内は夕食時、ということもあって、段々と騒がしくなってくる。
親子連れや、部活帰りの学生達、それから金のないカップル…。
一体、自分達はどのように映っているのだろう?
親子?
…それとも、カップル?
「さてと。ドリアも楽しんだことだし、メインイベントにいきますか♪」
そういって、エドワードは当初計画していた例のチョコレートパフェを注文した。
「アンタは?食後のデザート。」
「遠慮しとくよ。」
「そう。」
さほど気にせず、エドワードは再びメニューへと視線を落とす。
別に何か注文するわけではない。
ただ…あまり会話も弾まず、気まずいから、気を紛らわしているのだ。
まるで、久々に父と二人だけで食事をしに来た子供の様に…。
それを思うと、やはり自分達は親子に見えているのだろうか?
それなら、それでかまなわい。
ただ…内心複雑だ。
自分はまだ二十代で、彼女はもう十を数える年齢なのだから…。
「やった、来たぜ!」
彼女は運ばれてきた注文の品に感嘆の声をあげた。
確かに、これはスゴイ。
テーブルに置かれたパフェは、ゆうに座っている彼女の頭を越している。
「なぁ、食べていいか?」
「どうぞ。」
彼女は夢中でかぶりついた。
お陰で、物の数分と経たぬうちに、口や頬はクリームだらけだ。
その食べっぷりに、思わず通り掛りの店員も笑いを洩らす。
…ちょっと恥ずかしいかも。
出来るなら、もうちょっともうちょっと御しとやかに食べて欲しいものだ。
だって、こんなに可愛らしい容姿をしているのだから。
「なぁ、本当に食べないのか?スッゴク美味いぜ?」
「あぁ…甘い物はあまり。」
「そんなこと言うなよ。ちょっと食べてみれば、絶対に食べたくなるって。ほらっ!」
すると、彼女は何の躊躇もなく、たっぷりとクリームをすくったスプーンを、自分へと差し出してきた。
「え?!」
「ほら、一口どうぞ。まずは試してみなきゃ。」
別に誰が見てるわけでもない。
他の客はそれぞれの会話に夢中だ。
けれど…なんとなく、気恥ずかしくて、ロイは赤面した。
こんな、今時、バカップルでもやらない事を平然と…。
改めて、子供の恐ろしさを痛感する。
「なんだよ。俺のパフェが食べられないっていうのか?」
いつまでも躊躇するロイに、エドワードは不機嫌そうに言う。
「だ、だが…」
「とにかく、いいから食ってみろって!」
すると、エドワードは半ば無理やり、ロイの口へスプーンを押し込んだ。
瞬間、とろりとした食感と、甘さが口一杯に広がる。
そのバランスは、けしてくどくもなく、軽過ぎもこともなく…。
「…あ、美味いかも。」
「だろっ!だから、食べてみろって言ったんだ!俺の言う事に狂いなし!」
エドワードはそう言って、ニッコリと笑った。
その屈託の無い無邪気な笑顔は、思えば、出会ってから初めてだったかもしれない。
確かに、夕食でカッコイイところを見せることは出来なかった。
だが、彼女のこんな笑顔を見られただけでも…ある意味、成功だったのかもしれない。